駒澤3冠への軌跡 その4 ~3冠達成へ①~

箱根後~出雲前

最後は2022年度、駒澤の3冠達成までの軌跡を2回に分けて振り返ります。箱根以降、出雲までは3冠を達成できるような雰囲気は、少なくとも私には感じられなかった。ハーフで山野が60分40秒の日本学生記録を叩き出し、篠原、花尾が続いたのは収穫だったが、学生ハーフでは目立った新戦力の台頭はなく、関東インカレでは青学の表彰台に上がる強さを見るばかり、花尾がハーフで2位に入ったのが数少ない見せ場だった。


トラックシーズンでは田澤、圭汰がともに13分22秒という快走はあったが、勝負レースでは苦戦することも多く、勝負レースで活躍したのは篠原くらい。唐澤も芽吹も箱根以降1度もレースに出場せず、安原が13分37秒のベストを出したのは良かったが、前年度と比べても青学と比べても低調なトラックシーズンだったことは否めなかった。


田澤が日本選手権に苦戦し、世界陸上に出場して出雲にどこまで合わせられるか未知数だったこと、圭汰が高校時代ほどの圧倒的な強さをトラックシーズンに見せられなかったこともあって、箱根後も出雲の直前でも個人的な評価は変わらず、出雲は東京国際、箱根は青学が大本命で駒澤は全日本の3連覇が現実的に狙える唯一の目標という認識だった。

出雲

そんな状況が変わったのは出雲の前日、東京国際が出雲優勝メンバーの山谷、佐藤、宗像を揃って欠いたエントリーに加えてヴィンセントが3区という万全の区間配置では無かった一方で、駒澤は私が想像した以上の完璧な区間配置だった。芽吹は早くても全日本と聞いていたので、出雲は出場しないと思っていた。それが6区という最長区間、1区花尾、3区田澤は予想していた配置、補員が山川、伊藤の2人だったため主要区間の当日変更の可能性は低かったが、監督から当日変更はしない予定というコメントがあり、エントリーメンバーで考えうる最強の区間配置となった。


前年度は芽吹が補員から外れ、唐澤も4区と明らかに万全でない区間配置で絶望しただけに、区間配置を見た時の高揚感を余計に感じた。このメンバーならば「出雲を勝てるかもしれない」そして迎えた出雲、1区の花尾が見せたレース巧者の走りが非常に大きかった。中央の大和には抜け出されたものの、2位集団を上手く利用して前との差を留め、集団を抜け出して前を追う走りは強さと巧さが無いと出来ない。


トップと9秒差の2位は理想的な1区だったと言って良いだろう。そして2区の圭汰は高校時代に見せた強い姿だった。あっという間に先頭をとらえ、単独トップに立つ走り、トラックシーズンに感じていた不安は払拭された。3区の田澤は万全では無かったものの、後続との差を縮められないのはまさにエースの走り。4区山野の区間2位の走りの一方で青学が区間6位と苦戦して大きく後退、優勝争いのライバルは現実的に國學院と中央になった。


最も不安になったのは5区の序盤、33秒あった差が一気に20秒ほどに縮まったとき。このままでは國學院や中央に追いつかれてしまうのでは、逆転されてしまうのでは。そうなった場合に10か月ぶりのレースがいきなり出雲アンカーとなった芽吹で勝てるのか?そんな不安を払拭したのは安原の後半の走り、前半抑えて後半引き離す先頭で見せるお手本のような走りで逆に差を広げた。


それでも…駒澤は過去に何度も出雲6区で逆転を許していたこともあって、2位と44秒差があっても安心は出来なかったが、芽吹が復活の区間賞の走り、10か月前に見せた悔し涙が復活の嬉し涙に変わる走りは感動的だった。区間賞×3、区間2位×3と9年前と同じ完璧な走りで優勝、ここで一気に3冠への機運が高まった。

全日本

全日本は駒澤が極めて得意としているレースであり、出雲であれだけの強さを見せたのであれば、全日本も余程のことが無い限り、勝てるのではないかという雰囲気になり、私も同様だった。前年度はあれだけ主力を欠いていたのに優勝出来たのだ、今年度の戦力を考えれば岸本、佐藤ら主力が戻ってきた青学にも負けないはず…しかし、当日変更で芽吹が走れないことが判明し、一気に不安が増した。チーム2番手の選手を欠き、4区山川は高3以降は目立った実績が無いが大丈夫なのかと…


1区で青学の目片が抜け出す展開は駒澤にとって最悪の状況、優勝を争う最大のライバルが抜け出したことで、大差をつけられてしまう可能性もあったが…結果として円が1区4位、青学と9秒差で留めたのは3大駅伝初出場とは思えない安心の走りだった。全8区間で駒澤が最も有利だと思っていた2区、ここでどれだけ離せるかが勝敗に直結するであろう中で圭汰は素晴らしい走りを見せた、区間賞を1秒差で逃したのが唯一残念だったが、最大のライバルである青学に2分19秒もの大差を1区間でつけた。


2区終了時で駒澤の優勝は大きく近づいた。3区山野は区間5位の走りで後続を引き離す走りで2位に38秒差をつけることに。そして4区山川がどれだけ耐えられるかが重要だったが、ここでまさかの区間賞の走り、これは衝撃的だったと同時に優勝を確信した。他大学が最も差を詰めたかったであろう4区で逆に広げてしまったのだから。5区の篠原が区間2位、6区安原が区間4位でさらに総合2位との差を広げる安心の走り。


田澤が7区区間新&区間賞の走りは青学の近藤との勝負という点で見れば非常に見ごたえがあったが、優勝争いとしてはタイム差が大きく、むしろ箱根に向けて田澤が完全復活を果たしたのが大きいという印象だった。8区花尾が前半から攻める積極的な走りで区間賞を獲得、この走りも箱根に向けて頼もしい限り。全日本は2位の國學院と3分21秒差、5時間6分47秒という圧巻の走りで2冠を達成、箱根に向けて手ごたえを感じるレースだった。

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