箱根駅伝 連覇の難しさ(2019~2023)
ここ5年の箱根駅伝における大きな特徴として、どの大学も連覇を達成できていないことが挙げられます。それまでは駒澤の4連覇、東洋の2連覇を含む4年で3度の優勝、青学の4連覇と一時代を築いていたのですが…連覇を達成出来なかったのが4年生頼りのチームで優勝→大幅な戦力ダウンならば分かるのですが、むしろ優勝した翌年度の方が強いのでは?と思われる大学ばかりで、連覇の可能性が高いと言われながらも勝てていないんですよね。前年度優勝校と優勝校の走りを振り返っていきます。
私が最も連覇を疑わなかったのが2019年の箱根、青学は出雲・全日本といずれも優勝を果たしており、2度目の3冠に王手をかけていました。4年生に橋詰、森田、小野田、林ら主力が揃い、3年の鈴木、竹石、2年の吉田圭らが揃う布陣は2度目の3冠&5連覇が確実だと思っていました。3区森田の区間新の走りでトップに立った時はいつもの必勝パターンかと思ったのですが、4区岩見が区間15位、5区竹石が区間13位と連続の二桁順位でまさかの往路6位に沈むことに。
監督も話していましたが4区をやや軽視していたということが1つ、さらに8秒後ろに東洋の相澤がいて驚異的な区間新をマークされ、自分のペースで走れなかったこともあったか。林、吉田圭、鈴木のいずれかが4区を走っていたらまた違っていたかも…復路は区間賞3つ、区間2位2つという完璧すぎる走りで追い上げたものの、総合2位で5連覇&3冠を逃すこととなりました。
黄金世代が3年となった東海大学、過去2回の箱根が10位、5位だったこともあって優勝候補では無かったはずですが、3区終了時に総合4位で耐えると、4区館澤、5区西田の区間2位の走りで往路2位。青学が4,5区で崩れたこと、復路にも主力を残していたことで現実的に優勝が見えてきました。
大事な復路は8区区間新の小松を始め、区間2位3つ、区間3位1つというこれまた素晴らしい走りで東洋を逆転し、悲願の初優勝を果たしました。黄金世代が10区間中7区間を占め、この世代が本領発揮した時の強さを見せつける結果となりました。
黄金世代が4年時になったこと、全日本を主力を複数欠いた状態で優勝したことで東海が優勝候補筆頭と目されていましたが…区間二桁順位こそなかったものの、名取、西田らが万全では無かったことで3~5区でそれぞれ1分前後、3区間で3分以上の差をつけられてしまったのが痛かったですね。復路も6区館澤の驚異的な区間新を始め、区間賞2つ、区間3位2つと粘ったのですが、これは青学が凄すぎました。
優勝した前年度のタイムをさらに4分近く縮めて10時間48分台で走ったのに3分差をつけられましたからね。前年度6区2位の中島、7区2位の阪口らが起用出来なかったというのもありますが、万全であっても勝つのは難しかったかも…
主力が多く卒業した2020年の箱根で優勝するとは正直思いませんでした。まずは2区を走った岸本が日本人ルーキー最速の走りを見せ、4区で驚異的な区間新をマークした吉田祐の走りがとにかく大きかったですね。4年生は他にも谷野、中村と箱根初出場の選手が快走を見せ、前年4区で苦しんだ岩見が区間2位、箱根初出場の神林が9区区間賞で優勝を決定づけました。
森田・小野田世代が抜けた翌年度に箱根初出場の選手がこれだけの走りを揃って見せ、10時間45分を叩き出すとは思いませんでした。5連覇を達成できずに青学は一旦苦しくなるのかなと思いましたが、とんでもなかったです。東海の黄金世代も卒業しますし、これからも青学時代が続くと思わせる走りでした。
この年の青学は圧倒的な優勝候補では無かったものの、駒澤、東海とともに3強と呼ばれる位置づけで個人的には青学が一歩抜けていると思っていました。前回2区を走った岸本、全日本7区で驚異的な走りを見せた神林の2人を故障で欠いたのが結果的に大きく響きました。神林は直前で起用出来ないこととなりましたし。2区中村が区間14位、3区湯原が14位というのは、2区岸本、3区神林と起用出来ていれば…と思わずにはいられませんでした。
さらに5区竹石が区間17位となったことで往路はまさかの12位に沈むことに。復路は5区間全てで2~4位という安定感で12→4位と順位を上げたのは青学の底力を見せましたが、かつてほどの安定感は見せられなくなっていたかなあ。
全日本を制覇して優勝候補としても名前が挙がっていた駒澤大学、前年度は5人出場した4年生が1人しか出場せずという中、1区15位と出遅れるも2区田澤、3区小林の走りで総合2位に浮上、往路は3位と希望が残る位置に。6区花崎の驚異的な区間賞で差を詰めるも9区終了時で3分19秒と創価に絶望的な差をつけられることに。
そこから10区石川の区間賞で大逆転、13年ぶりの箱根優勝を果たすことになりました。展開はあまりにも劇的で優勝争いをしたのが創価だったのはビックリでしたが、全日本を制していましたし、箱根優勝というのは十分に狙える状況ではありました。
優勝メンバーが9人残っていて優勝候補として名前が挙がってはいましたが、箱根前は正直筆頭では無かったですね。全日本は優勝したものの主力を欠いていましたし、長い距離に不安のある選手も多かったですからね…結果として2区終了時でトップに立つも3区安原が16位で優勝争いからは脱落、8区芽吹がアクシデントで18位となり、そんな状況で総合3位はむしろ粘った方かなあ。
前年度の優勝メンバーから卒業した小林だけではなく、酒井、花崎、石川らが抜け、ルーキーの条二、篠原も体調不良や故障で起用出来ず、そもそも現実的に優勝を狙える状況では無かったかもしれませんが…万全の状態であっても青学には太刀打ちできなかったでしょうし、今回はどうしようも無かったかな。
優勝候補筆頭は青学という意見が多かったですし、私もそう思っていました。全日本では最後の最後までもつれた優勝争いに敗れての2位でしたが、その後1万やハーフで面白いように自己ベストを連発していましたからね。それでも、あそこまで完璧なレースを見せるとは思いませんでしたが…3区のルーキー太田が区間2位の走りでトップに立つと、5区若林も区間3位の走りで往路優勝、ルーキーの大活躍が目立ちました。
復路には岸本も佐藤も残していて盤石、実際に岸本が7区区間賞、8区佐藤が区間2位でしたが…さらに青学の強さを見せつけたのが9区中村、10区中倉の区間新記録。従来の記録を大幅に更新する走りで総合2位に10分以上の大差、10時間43分42秒の最速タイムをマークしました。
2022年の箱根が終わった直後、もう連覇は確実だと思っていましたが…状況が変わってきたのは駅伝シーズン、出雲・全日本ともに優勝争いに加わることも出来ない一方で駒澤が2冠を達成し、箱根は2強対決と目されていました。4区終了時では駒澤と1秒差の2位とある程度計算通りのレースが出来ていましたが…
若林を体調不良で欠いた5区で区間9位、その影響で急遽6区を走った西川がまさかの区間最下位に終わり、山の2区間で優勝争いから脱落することに。それでも9区岸本の快走もあって往路と同じ総合3位でのフィニッシュとはなりましたが。歴代最速タイム、総合2位に10分以上の差をつけた優勝メンバーが8人残ったチームが翌年度逆に7分差をつけられることになるとは思いませんでした。9区区間記録保持者の中村も出場出来ませんでしたし、ベストな布陣が組めていれば最後まで優勝争いに加わっていたかも…
出雲、全日本を大会新記録で制して3冠王手をかけた駒澤、それでも箱根となるとまだ青学の方に分があるのではないかと思っていましたが…体調不良で圭汰、花尾を欠くギリギリの状況ながら往路は全て区間2~4位以内でまとめてルーキーの山川が往路優勝のゴールテープを切ると、6区伊藤の区間賞の走りはMVP級の活躍、その後も全10区間全てで区間5位以内の快走、最後まで喰らいついてきた中央を振り切って悲願の3冠を達成しました。
大エースの田澤が抜けたものの、優勝メンバーが7人残っていること、さらに箱根に花尾、圭汰を起用せずに優勝したということもあって箱根が終わった時点では100回も優勝候補筆頭であろうと言われていました。その後も芽吹、安原ら4年生を中心にトラックシーズンに大活躍、唐澤も復活を遂げたことでさらに戦力は整ってきました。3年生が中心世代として優勝し、4年生が連覇を狙うというのは青学や東海と全く同じパターンです。
優勝を狙える戦力は揃っていますが、連覇を達成する大変さはこの5年間の箱根が証明しています。まして駒澤は3冠という最大の目標を達成し、2年連続で高いモチベを維持するのも困難です。過去5年で箱根直後に最も連覇する可能性が高いと思ったのが近藤、岸本世代の3→4年時だった青学、箱根直前だと3冠を狙っていた青学の森田・小野田世代が3→4年時かな。ついで東海の黄金世代が3→4年時…
この3チームが翌年度の箱根優勝を逃すのに、駒澤以外に中央、青学、國學院ら有力校が揃う今年度の駒澤は箱根で連覇を達成出来る可能性が高いとはなかなか言えないかなあ。。3年生中心に優勝した大学が再び4年時に連覇を逃すのか、それとも駒澤がこの5年のジンクスを覆し連覇を達成するのか、記念すべき100回大会の箱根における優勝争い、非常に楽しみです。