第57回(2025年)全日本大学駅伝レース結果 ~駒澤が2大会ぶり17度目の栄冠~

波乱続きだった出雲から一転、全日本では有力校と言われる大学が順当に上位にきました。それでも、各区間ではそれぞれに見どころも多く、全て2秒以内の差であったものの、先頭が1~5区までは毎回入れ替わる展開となりました。各大学ごとの振り返りはまた後日行うとして、今回は各区間ごとのレース結果を振り返っていきたいと思います。公式結果はこのようになっております。私の大会大学別成績(HP)にも関東勢の結果は反映済です。

1区区間賞:中村(志學館)

1区は基本的にスローな展開ながら後半は中央の本間が仕掛けたりと徐々にハイペースに。その中で区間賞を獲得したのはなんと志學館大のエース中村、関東以外ではトップクラスの実力者ではありますが…関東15校全てに勝利しての区間賞は今大会一番のサプライズだったかも。関東勢では早稲田の間瀬田、國學院の尾熊、駒澤の小山、日体大の荻野と5位まで2秒差、9位の本間でも5秒差ですから例年通りあまり差がつかない展開に。


そんな中では日体大の荻野の走りは特に光りました。箱根予選では良かったですが、それでも1区5位で走るとは…青学は椙山が区間12位も8秒差は全然問題無い走り、東海の主力である兵藤は区間18位で35秒差と苦しい走りに…1区の時点で苦しいかなと思っていましたが、箱根予選から合わせられるかは選手やチームにとって大きく異なってきますし、仕方ないかな。大東大も区間21位と大きく出遅れてしまいました。

2区区間賞:楠岡(帝京)

1区で秒差になると2区が大事になるというのが例年の展開、ここで最高の走りを見せたのが帝京の楠岡でした。高校時代は世代トップクラス、1年時はほぼ姿を見せず、2年で復活してきたと思ったら…3年時には出雲快走、全日本では区間タイ記録という驚異的な走りで区間賞、この走りはチームにとっても今後に向けても非常に大きかった。総合では2位だった帝京を上回って先頭に立ったのは中央の駿恭、区間順位こそ2位でしたがラストスパートはこれぞ駿恭と思わせる圧巻ぶりでした。


前年度、2区で苦戦した駒澤は谷中が区間3位と素晴らしい走りで先頭とも3秒差、この谷中がいれば圭汰を7区に残せますね、この走りはチームにとっても大きかった。早稲田も鈴木が区間4位と出雲に続いてもはやエースの走り、創価の小池も区間5位と見事な走りで出雲以外は二桁順位と苦戦することも多かったですが、エース区間でこの走りが出来たのは大きいです。東海の永本はチームが全体的に苦しい中、3大駅伝初出場で区間6位と見事な走りでしたね。一気にエース格の仲間入りを果たすことに。


日体大の平島、順大の井上が区間6,7位で続く中、前回王者の國學院は辻原が区間9位とやや遅れてしまうことに。青学の荒巻も区間10位と奮わず、國學院と青学にとっては苦しい区間となりました。箱根予選日本人トップの近田は関東勢で最下位に沈んでしまい、こちらは箱根予選のあの快走を見せれば仕方ないですよね、あの走りから2週間では。。。

3区区間賞:野中(國學院)

ここで圧倒的な走りを見せたのが國學院の中、出雲3区でも留学生相手に互角以上に渡り合っていましたが、全日本では出雲で敗れたキムタイを1秒上回って区間賞を獲得、特に終盤の走りはもう別格でしたね。先頭とも31→1秒差まで迫ってきました。キムタイは惜しくも3年連続の3区区間賞とはならず、2区までの出遅れも響き、13→10位と3つ順位を上げるに留まりました。


駒澤の帰山、中央の藤田が区間3,4位で帰山がわずかに先頭、藤田が野中とともに1秒差という接戦に。帰山が前半落ち着いて入って後半先頭に立ったのもラスト追いつかれても1秒前に出た走り、藤田も前半突っ込み、一度差をつけられても再び追いつく走り、それぞれ違うレース展開で見せ場を作りました。区間5位に日体大の田島、ここまで総合5位と箱根予選で苦戦したとは思えない理想的なレース展開を見せました。創価のムチーニも区間5位タイで本来の力を考えるともう一歩だったかな。


青学の宇田川は区間7位とまずまず、東海の花岡が9位、中央学院の市川が10位と箱根予選で結果を残したエースたちもまとめてきました。その一方で早稲田の堀野は区間13位、順大の山本は区間14位と苦戦…上級生が殆ど走っている区間ですし、難しいところもあったかな。

4区区間賞:柴田(中央)

國學院はここでリードしたいところでしたが、高山は2秒差の区間2位、決して悪くはなかったですがその高山を上回って区間賞を獲得したのが中央の柴田、エース候補と言われながら故障や体調不良などもあってなかなか万全の状態で3大駅伝に出場出来ていませんでしたが、この走りは素晴らしかったです。総合でも2秒差で先頭に浮上しました。


帝京の谷口がここで区間3位と素晴らしい走りで総合3位に浮上、創価の織橋も区間4位の走りでしっかりと前を追っていきました。一方で駒澤は海晴が区間5位も区間5位以内がいずれも総合で5位以内のチームだったこともあり、先頭から35秒差の4位に後退してしまうことに。5位の創価とも1秒差という状況でした。早稲田の吉倉が区間6位と上々ん走り、出雲で区間賞の塩出は区間7位ともう一歩だったかなあ…

5区区間賞:伊藤(駒澤)

驚異的な走りを見せたのが駒澤の伊藤、区間記録を17秒も更新しての区間賞&区間新だけでも凄さがわかりますが、一番は区間2位とのタイム差、1分25秒というとんでもない差をつけて先頭と35秒差の4位→2位と52秒差の先頭に浮上しました。この走りはまさにゲームチェンジャーと呼ぶにふさわしいものでしたし、監督の期待に最大限に応える走り、MVP獲得も納得しかありません。区間2位に國學院の飯國、3位に中央の三宅と優勝を狙う2大学もしっかりと区間3位以内で走っているんですよね。これはもう伊藤が凄すぎました。。。


青学の佐藤有はここで区間4位と上々の走りで初駅伝をまとめ、順大の川原が区間5位、本来であれば主要区間も走れる選手ですし、ここに川原を起用出来てこの走りを見せてくれたのも結果的に大きかった。創価のルーキー衣川も区間6位は上出来と言っていいでしょう。今後主力となっていってくれそう。早稲田の小平、日体大の吉田が区間7,8位で続きともに3大駅伝デビューをしっかりと走ってくれました。

6区区間賞:飯田(青学)

出雲では3区10位と苦戦した飯田がここで区間賞を獲得、本来であれば主要区間を担うべき選手ですし、まずは駅伝で一度好結果を残せたのは良かったですね。今後に繋がっていきそう。駒澤の村上が2秒差の区間2位、ここで後ろにいる中央と國學院と差を広げられたことは7区、8区を見据えても大きかった。優勝を大きく近づけることとなりました。区間3位に中央の佐藤大、4位に國學院の佐藤と駒澤、中央、國學院の3校はほとんど区間5位以内で6区まで走り続けました。


順大の石岡が区間5位の走りを見せたのも大きく、ここで総合8位とついにシード圏内に入ってきました。逆に日体大は大竹が区間14位と苦戦してしまい、8位と47秒差と一気に差がついてしまうことに。早稲田の宮岡、帝京の尾崎が区間6位タイとなっており、シード圏内の2校は安定しています。立教は永井が区間8位でこれが唯一の区間一桁ということに。前回シード校としては苦しいですが、永井はよく走りました。

7区区間賞:黒田朝日(青学)

ここで驚異的な走りを見せたのが青学の黒田朝日、総合で5→2位に浮上する順位も49分31秒と区間記録を7秒も更新する走りも圧巻でした。区間2位に46秒もつけているのも素晴らしいですね。どんな順位であっても結果を残し続けるのはさすが絶対的なエースです。区間2位に日大のキップケメイ、さすがにシードラインはまだ遠いですが、ここで14→10位に浮上しました。区間3位に駒澤の圭汰、まだ状態は6割程度ということですがそれでもしっかりと走れるのは流石です。総合2位との差では1分4秒→1分57秒まで広げ、優勝を決定づけました。


区間4位に早稲田の山口智、順位は決して悪くないですが、区間賞と1分26秒差というのはちょっと本人も悔しいところか。帝京は島田が区間5位と見事な走り、2,7区を揃って好走する理想的な展開でした。中央の岡田は区間6位、國學院の青木は区間9位にとどまり、中央が3位、國學院が4位に後退してここで優勝の可能性が実質潰えてしまうことに。出雲で良かったエースたちが全日本ではもう一歩だったかな。


シード争いでは、ここで日体大の山崎が区間7位、順大の古川が区間14位だったこともあり、再び日体大が8位、順大が9位とシード圏内が入れ替わることに。そして結果的に響いたのがここで区間16位だった城西の中島、8区斎藤がいただけにここでせめて古川と同じくらいで走れていれば良かったのですが、順大ともこの区間だけで52秒離されてしまいました。

8区区間賞:工藤(早稲田)

56分59秒という早稲田の渡辺康幸が30年保持していた日本人最高記録を破るのが、早稲田の後輩である工藤というのは、破られた本人も満足でしょう。この走りでも6→5位と1つしか順位を上げていないのが周りの高さを示していますが、それでも工藤がハーフの距離において抜け出た存在であることを見せてくれました。


区間2位に中央の溜池、前半突っ込みながらも後半しっかりと粘りました。総合でも2位に浮上し出雲10位から、前回の12位で予選会から見事に立て直してきました。溜池もさすがエースの走りでしたね。区間3位に駒澤の山川、前半抑えて後半上げる珍しいレース展開でしたが、先頭であればこれが理想的。4年連続区間賞は逃しましたが、盤石の走りで優勝のゴールテープを2年ぶりにきりました。


区間4位に國學院の上原、終盤差し込みがきてしまったのか脇腹を押さえていましたね。再び青学に逆転されてしまい、総合でも4位で連覇はならずでした。青学の小河原は区間7位も3位を再度逆転して表彰台に上がる走り、出雲1区に続いて主要区間を担っており力があります。区間5位に城西の斎藤、前半一気にシードラインに迫ったときはひょっとすると…と期待を抱かせるものでしたが総合では9位であと一歩届かずシード落ちに。全体として噛み合わなかったかなあ。


区間6位に創価の山口、すでに最長区間を2年生にして任せられる信頼、それに応える走りもさすがでした。帝京の浅川も区間8位でまとめて総合6位、連続シードを余裕をもって確保しました。シード争いは小林が区間10位の走りで再び日体大を逆転しての8位で獲得、箱根予選出場校の中で唯一シード獲得を果たしました。日体大は佐藤大が区間16位に沈んでしまったことで総合11位まで下がることに。日大の鈴木が区間9位の走りで総合10位をキープしました。