第56回(2024年)全日本大学駅伝レース結果 ~アンカー勝負を制した國學院が初優勝&2冠を達成~
1区はラスト1kmくらいまではずっとスローペースでしたね。関東以外が先頭を引っ張る時間帯も多かったですし、1区で稼がないといけない優勝やシードを狙う大学も無かったですから。関東勢で早めに集団から落ちる大学もありませんでした…前回も青学の若林が抜け出した以外は比較的スローでしたが、それでも1区区間賞と関東勢最下位は50秒差がついていました。それが今回は区間賞と関東勢最下位がわずかに13秒ということで、ほとんど差はありませんでした。
それでも日体大の1区平島が区間賞を獲得したのにはびっくりしました。箱根予選では見事な走りを見せていましたが、前回の箱根では1区最下位でしたから…國學院の嘉数が2位、創価の小暮が3位、青学の野村が4位と出雲でトップ4だった大学が入ってくる中で出雲2位の駒澤は7秒差とはいえ区間14位ということに。さらに前回1区2位だった間瀬田が19位、故障明けである中央の溜池が20位と順位では下位となりました。
1区でほぼ差が無いとなると、2区が極めて重要になってくるわけですが…ここにエース格を起用した創価と青学がハマりました。創価の吉田響は積極的な走りでずっと先頭集団を引っ張っていましたし、そこに最後までついていき最後に突き放した鶴川も素晴らしい走りでした。結果として鶴川が区間賞を1秒差で獲得、吉田響が1秒差の区間2位で続き、区間3位のベットとは30秒以上の差をつけています。帝京の山中、早稲田の山口智がともに区間4,5位ということでチームのエースが上位に来ています。
区間6位で走った中央のスーパールーキー岡田も素晴らしかったですね。箱根予選との連戦で苦戦する選手が多い中、積極的な走りで粘りました。優勝候補では國學院の青木瑠が区間7位も青学とはこの区間だけで55秒離されることに。さらに駒澤は桑田がまさかの区間17位で関東勢最下位、この区間だけで2分19秒もの差をつけられ優勝争いから脱落ということに…エースを起用した大学では、日体大の山崎が区間8位、大東大の西川が区間10位も東海の花岡は区間12位、立教の國安は区間14位と苦しい走りに…1区と打って変わって大きく順位変動する区間となりました。
2年連続で区間賞を獲得したのがキムタイ、留学生がなかなか区間賞を獲得できない中、キムタイはこれで出雲・全日本は2年連続3区でダブル区間賞となりました。10→5位と5つ順位を上げています。キムタイはある意味順当ですが、会心の走りを見せたのが駒澤の伊藤、初の主要区間でしたがどんどん前を抜いていき、16→8位と8つも順位を上げて1区間でシード圏内まで戻してきました。区間3位とも20秒離していますし、伊藤がエース区間で優勝候補と互角以上に戦えたというのは大きな経験となったのでは。
國學院の辻原も区間3位とさすがの走り、もうエースの一角です。さらに東京国際の佐藤榛も区間4位と2年連続3区で好走、3区終了時で4位と好位置を守りました。No.1ルーキーと言われる青学の折田は区間5位、悪くは無かったですが折田ならばもっと走れるのでは?とも思ってしまいますね。故障明けだった東洋の梅崎は区間7位とまずまず、神大のエース宮本も区間8位の好走で途中棄権の箱根予選から見事に復活を遂げました。創価の石丸惇は区間10位も総合2位は死守、早稲田の藤本が区間15位、東海の梶谷が区間17位と苦しい走りとなりました。
本来つなぎ区間の4区にエースを起用してきた大学が2校ありました。青学はまさかの箱根2区区間賞である黒田朝日を起用、先頭で朝日は贅沢すぎる展開ですが、ここで区間2位に38秒もの大差をつけて区間賞&区間新を獲得しました。朝日の実力からすれば順当ですね。城西は2年連続で斎藤を起用、区間2位の走りで総合でも2位に浮上しました。
エースを起用した大学が区間トップ2を占めるのは順当なのですが、区間3位に駒澤のルーキー谷中が入ったのはビックリしました。出雲記録会で良かったので期待はしていましたが、8→5位と3つ順位を上げる快走で斎藤とも3秒差は今後が非常に楽しみになります。國學院の高山も区間4位でまとめてここは優勝候補が順当に上位に来ることに。
エース級を他に起用した大学では、早稲田の伊藤大が区間5位、大東大の入濱が区間6位とさすがの走り、箱根予選を回避した稲塚も区間7位は上出来ですね。その一方で箱根予選未出場だった中央の浦田は区間13位と苦戦、箱根予選との連戦となった東海のルーキー檜垣は区間20位と非常に苦しい走りとなりました。
出雲でも優勝に大きく貢献した野中が2大会連続の区間賞を獲得、創価のムチーニを6秒上回ってきましたし、区間3位にも33秒差をつける圧巻の走りでした。今年度の國學院大躍進の鍵になっている選手ですね。前年度は3大駅伝未出場からの連続出場はいかにこの1年で力をつけたかが分かります。青学とも41秒差まで縮めて優勝争いが面白くなることに。ムチーニも故障明けながら区間2位はよく走ってくれました。4→3位と順位を上げて後続を引き離す走りでした。
早稲田のルーキー山口峻も区間3位の好走で4区の伊藤大といい、出雲で苦戦した主力2人がつなぎ区間で立て直してきました。青学の田中は苦しそうでしたがそれでも区間4位でまとめていますし、國學院の野中が凄すぎました。駒澤の村上も区間5位は悪くないですが、タイム差では区間賞と53秒離されており最終的にはこの差が大きかったかな…
大東大の棟方が区間6位で走ったのはちょっとびっくりで11→7位と4つ順位を上げてシード圏内に入ってきました。シード争いは中央の東海林が区間9位で総合8位、総合9位の日体大とは5秒差で引き続き激しい争いとなっています。そんな中で東京国際は益田が区間15位で6→10位と4つ順位を落としシード圏外に下がることに。
一気に優勝争いを白熱したものにしたのが國學院の山本、これまで主要区間を走ることが多かったこともありますが、まだ区間4位以内で走ったことは一度も無かったんですよね。それがここで区間賞&区間新という素晴らしい走り、一気に青学と4秒差の2位まで迫りました。差し込みがあったようで脇腹を気にしていましたが、ペースは落ちずに走り切りました。青学の白石も区間2位と決して悪くは無かったですし、2年前の全日本以来となる3大駅伝で結果を残しました。区間賞の山本とは37秒離されていますが、これは相手を褒めるべきかと…
駒澤の海晴が区間3位と3大駅伝デビューながら見事な走り、4~6区の下級生トリオが揃って結果を残したのは今後につながるはず…兄が3年連続走った区間のため、4年連続で「安原」が6区を走ることになりました。区間4位に帝京の楠岡、区間5位に立教の山口が入ったのも素晴らしかったですね。帝京は総合9位、立教は11位とまだシード圏外でしたが、7区のエースに良い形で繋ぎました。日体大の山口が区間6位、中央のルーキー佐藤大が区間7位で総合7,8位となっており、引き続きシード争いは熾烈です。
総合上位では、創価の黒木が区間9位、城西の桜井が区間11位もそれぞれ総合3,4位は死守、早稲田も伊福も区間10位で総合6位を守っています。エース級も起用されましたが、大東大のワンジルは区間19位と大東大の留学生は出雲に続いて大苦戦、東洋の石田はまさかの区間21位に沈み、2年ぶりの全日本は苦しすぎる走りとなりました。
優勝争いはもう青学の太田、國學院の平林ともに一歩も譲らずでした。太田は突っ込んで入って差を広げれば、平林は後半で追いつく、追いつかれれば太田が今度はラストで突き放し、全く同じ区間タイムでともに区間2位タイ、総合では4秒差のままで最終区間に繋ぐことに。そんな2人を上回ったのが駒澤のエース篠原、出雲ではアンカー対決で平林に敗れて悔しい走りでしたが、今回は単独走で2人を10秒上回り、史上3人目の49分台をマーク、5→3位と2つ順位を上げて後続とも大差をつけ、総合3位をほぼ確実にしました。
シード争いで会心の走りを見せたのが立教の馬場、区間4位で11→7位と4つ順位を上げてシード圏内に浮上、後続とも差をつけて初出用で初シードを大きく手繰り寄せました。早稲田の長屋も区間5位と素晴らしい走り、シードを確実としてさらに前を狙う展開に持ち込みました。帝京の福田も区間8位でシード圏内、区間7位の大林も素晴らしい走りで総合9位もシードとは11秒差に迫りました。東洋の緒方も苦しい展開ながら区間6位の走りは見事でしたね。
ここでまさかの走りになったのが中央のエース駿恭、箱根予選を回避してコンディションは良好ということでしたが、まさかの区間14位、8→11位と3つ順位を下げて8位とも1分5秒差をつけられました。
優勝争いは國學院と青学がともにけん制する展開となりましたが、このままだとまずいと判断した國學院の上原が引き離しにかかり、そのまま徐々に差を広げて優勝のゴールテープを切りました。全日本初優勝&出雲と合わせて2冠、箱根では全日本に続き初優勝&3冠を目指します。前半けん制したため、区間9位でしたが優勝争いのアンカーは優勝するかどうかがすべてですから、最高の走りを見せました。
8区で驚異的な走りを見せたのが駒澤の山川、前回8区区間賞を獲得していますが、7区終了時で2分37秒差あった青学を終盤に大逆転、57分9秒と日本人歴代2位の快走で優勝した國學院ともわずか28秒差と2分以上差を詰めました。7,8区という長距離エース区間でダブル区間賞を獲得し、エース力の強さを存分に見せました。今日走った全選手の中で最も衝撃的な走りでした。
まさかの総合3位に青学、またしてもアンカーでの優勝争いに敗れることに…前回全日本を優勝してから6大会優勝を逃していますが、うち4回がアンカー勝負に敗れてのものです。塩出が区間15位というのは展開を考えてもあまり気にする必要はありませんが、さすがに2位は死守したかったところですよね…2位と17秒差の3位となりました。
8区で素晴らしい走りを見せたのが野沢、あまり姿を見せていなかったですが、区間2位でタイムも57分48秒と好タイム、総合4位は変わらずですが野沢の完全復活…というかさらなる飛躍を遂げたのはチームにとっても大きいです。早稲田の工藤は区間3位と出雲に続いて最長区間で素晴らしい走り、6→5位と1つ順位を上げ、1年でシード返り咲きを果たしました。
城西の平林は5→6位と1つ順位を落としたとはいえ、区間5位と素晴らしい走りでしたね。エースの1人となりましたが、最長区間でその力を見せてくれました。シード争いは立教の安藤が区間8位でまとめて総合7位、初出場で初シードの快挙を成し遂げました。帝京の小林も区間4位と素晴らしい走りも7位には3秒及びませんでしたが、それでも8位でシード返り咲きを果たしました。
東京国際は川内が区間13位で総合9位、あと一歩シード獲得には届かなかったものの9位は死守しました。日体大は浦上が区間10位で総合でも10位、3大駅伝で苦戦が続いていたこと、箱根予選を走った2週間後ということを考えても大きな収穫のあるレースでしたね。大東大は西代が区間6位とさすがエースの走りを見せましたが、それまでのタイム差が大きく総合11位で連続シードとはならず…
中央は阿部がまさかの区間18位で関東勢最下位…総合12位でのシード落ちは相当にショックな結果でした。箱根予選に主力を温存して全日本に賭けていましたからなおさら…ここからどれだけ立て直せるか。東洋の岸本は区間7位と苦しい位置でよく走りましたが総合13位は変わらず、7,8区の長距離区間は良かったですが、それまでに離され過ぎました。箱根ではまた立て直せるのか…全日本はこの4年間で3度のシード落ちと非常に苦戦しています。
区間16位で神大の志食、総合14位は変わらずでした。ずっと関東勢では下位の方でしたが最下位は回避、宮本の復活や近藤が区間1桁で走るなど収穫もありました。東海は竹割が区間12位で総合では15位と関東勢最下位、全日本トップ通過を果たしましたが、箱根予選落ちに続いて全日本でも3区以降はずっと関東勢最下位の15位ということに…来年度に向けて早急な立て直しが必要となります。。。