黄金世代の光と影 その3 ~駒澤大学~

2023年1月27日

黄金世代の光

駒澤の3年生世代は全大学の3年生において最もスカウトが成功した学年です。この学年は高校トップクラスが見事なほど様々な大学に分かれています。都大路1区を見ても、佐藤が青学、松山が東洋、小野が帝京、石原・喜早が東海、芽吹・白鳥が駒澤、児玉が明治、三浦が順大となっています。3区を見ると、中野・大和が中央、石井が順大と各大学がエース級を1,2人獲得しています。


これだけ見ると、駒澤のスカウトも他大学とそこまで変わらないのでは?とも思えますが…都道府県対抗でその強さが証明されました。芽吹は不出場でしたが、赤星が1区6位と快走、白鳥が1区11位、安原も1区12位と上々の走りを見せています。さらに4区では唐澤が区間賞&区間タイ記録の走り、最長区間の5区では赤津が区間5位、花尾は区間21位とやや苦戦しましたが、ここまでに名前が挙がった選手だけで7人を揃える学年となりました。駒澤史上最高のスカウトと言って良いでしょう。


その強さはやはり本物で1年目から存在感を示し、全日本では花尾、芽吹が出場して優勝、箱根では白鳥、芽吹、花尾の3人が出場して2冠を達成しました。ここまでは期待のルーキーが結果を残したという状況だったのですが…2年生になって状況が大きく変わります。唐澤が関東インカレ5千、1万で日本人トップの3位となり、田澤、芽吹とともに3本柱と呼ばれるまでに台頭しました。


3大駅伝でも、出雲では6区間中4人(安原、花尾、唐澤、赤津)が出場、全日本は故障者も多く4人(青柿、赤星、安原、花尾)の出場に留まりましたが、箱根では早くも依存の基準としている7人(唐澤、安原、花尾、金子、白鳥、芽吹、青柿)が出場することに。


黄金世代は7人が即戦力となってもおかしくないと思っていましたが…実際に2年時はその7人全員が3大駅伝に出場、それだけに留まらず金子が箱根5区4位と山登りの強さを示し、高校ベストが14分36秒の青柿が一気にチーム上位の5千、1万のタイムを叩き出して戦力となったことで、同一年度で9人が3大駅伝出場を果たすことに。2年にして黄金世代は質・量ともに非常に揃った中心学年となりました。

黄金世代の影

これだけ選手が揃うのは頼もしい限りなのですが、正直不安もありました。このままでは4年時には黄金世代が9人出場、3年生以下が1人のみ出場なんて可能性もゼロでは無いのでは…実際にはあり得なくても戦力的にはそれだけこの学年が抜け出てしまうのではという恐怖がありました。そうなった場合、黄金世代卒業後の戦力ダウンの大きさは計りしれず、暗黒期に突入してもおかしくありません。


実際、黄金世代の1学年下で13分台のベストを持つのは退部した条二のみ、吉本、亘理、小牧らが持ちタイム上位でしたが、ロードよりもトラックの方が強いという印象で箱根となるとなかなか厳しいのではと思っていました。黄金世代と比べると戦力的に劣るのは否めません。実際、この4人はいずれも箱根をまだ走っておらず、2年生で箱根経験者は篠原のみ、今年度エントリーされたのも他に吉本だけです。


2学年下は圭汰が圧倒的に抜けていましたが、箱根を走るのは上級生になってからではという話もあり、山川や帰山、山下ら楽しみな選手はいたものの、都大路で結果を残していたのは2年時に1区18位で走った山下くらいで、下級生のうちに箱根で黄金世代に割って入っていくのは困難だと思っていました。


結果として、3年時に黄金世代の存在感は大きく薄れることになります。理由はいくつかありますが…唯一ネガティブな理由は3年生の足並みが揃わなかったということです。故障が長引いた芽吹、箱根後に全く記録会にも出場していない唐澤と3本柱の2人が姿を見せず、花尾が唯一ハーフ路線で活躍を見せていましたが、安原は箱根の精神的影響も大きく、トラックシーズンも苦戦することが多かったです。3大駅伝に出場した黄金世代9人のうち、トラックシーズンで故障も不調もなく勝負レースで結果を残したのは花尾だけだったのでは?


その一方で他の学年は存在感を増してきました。特に4年生で円がチームの主力級にまで成長したのは大きく、全日本、箱根は1区で快走して3冠に大きく貢献。2年生も吉本が16人に入るまでに成長、他にも1万で28分台を出した亘理、小牧など2年となって徐々に戦力となりそうな選手が出てきたのも黄金世代の1学年下ということで非常に重要です。


1年生はトラックシーズンは圭汰が5千で13分22秒を叩き出したくらい、その圭汰も他のレースで苦戦することが多く、高校時代ほどの存在感はありませんでした。さらに他の選手も正直全然目立たなかったのですが…状況は駅伝シーズンで一変します。


出雲2区区間賞の圭汰、全日本4区区間賞の山川、箱根6区区間賞の伊藤と3大駅伝初出場で3人が区間賞を達成する快挙、特に高校時代は目立った実績のない伊藤がここまで強いというのは駅伝シーズンを迎えるまでは想像も出来ませんでした。本来であれば箱根6区を走る予定だった帰山も含めて、あっという間に大きな存在感を示す学年となりました。


3年生が苦戦する一方で他の3学年から新戦力が台頭したことで、出雲は6区間中3区間(花尾、安原、芽吹)、全日本は芽吹が故障で回避したこともあって8区間中わずか2区間(花尾、安原)しか出場出来ないことに。それでいてどちらも2位に大差をつけて優勝を果たしているのですから、弱くなったどころか前年度よりも遥かに強くなることに。箱根でも10区間中4区間(芽吹、安原、赤星、青柿)しか出場しておらず、2年時の7人から大きく依存度を減らすことに成功しました。


それでも、田澤、山野、円というチームの主力が3人も抜けることで、再び4年時には黄金世代に頼ることになる可能性が高く、卒業後の戦力は大きく劣ってしまうのかと思っていたのですが…ここで大事になってくるのが新入生です。理想は毎年有力選手を複数獲得することですが、それはどの大学も継続出来ていません。となると、まだ現実的なのは2年に1度有力選手を獲得すること、青学の4年生、2年生のようなイメージです。有力選手が揃う学年が常に上級生にいるので、大きな戦力ダウンがありません。


そして避けなければいけないのが3年連続でスカウトに苦戦することなんですよね。そうすると、有力選手が揃う学年が1年も被らず、ルーキーに1年目から頼ることにもなるので、安定した戦力を揃えるのが困難になります。駒澤は3大駅伝に初優勝をして以来、3年連続でスカウトに苦戦したことは一度もありません。もちろん大八木監督の手腕も非常に大きいですが、駒澤がシード落ちをすることはあってもすぐに立て直し、戦力が大きく下がってしまうことを防げた要因の1つが「3年に1度は良いスカウトが出来ている」だと思います。


現1,2年生も楽しみな選手が揃ってはいますが、3年生と比べると2年の篠原、1年の圭汰というエース級はいるものの、選手層で劣っているのは否めません。そんな中で選手層において3年生に負けない潜在能力があるかもしれないのが新入生ということになります。13分台のベストを持つ安原、小山、工藤に植阪はいずれも都大路で好走しているのが頼もしく、都道府県対抗でも良かった小山が現状一歩抜け出しているか。さらに14分1桁で島子、村上と続き、都大路で結果を残している小松もおり、14分30秒切りがすでに10人います。


この学年が現3年生のようにエース力も選手層も揃った中心学年へと成長を遂げることになれば、黄金世代が抜けた後も優勝争いに加わるようなチームを継続することが出来るかもしれません。まずは来年度、3年生以下がどれだけ4年生に割って入っていけるのか、そして卒業後も強さを維持できるのか、その答えを見るのはもうしばらく先のこととなりますが、少なくとも1年前よりも黄金世代卒業による大幅な戦力ダウンの不安は遥かに減ったのではないでしょうか。

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