黄金世代の光と影 その1 ~明治大学&東海大学~

最近気になっているのが、今年度の箱根でも2強と言われた駒澤と青学、そしてその中心世代である青学の4年生世代、駒澤の3年生世代が卒業した後も優勝候補としての強さを保っていられるかです。「黄金世代の光と影」と題して、個人的に印象に残っている黄金世代である2011年度入学の明治、2016年度入学の東海の在学時とその後を比較しながら、考察していきます。


黄金世代の定義については色々あると思いますが…「入学時に全大学で最も評価が高い学年であること」、「3大駅伝においてその学年に依存したことがあること」としています。一つの目安として、出雲6区間中5区間、全日本8区間中6区間、箱根10区間中7区間を同一学年で占めることとしています。

黄金世代の光(明治)

黄金世代の光についてはあまり語る必要が無いでしょう。明治であれば大六野、有村、文元、八木沢、松井、山田速らを擁し、4年連続で箱根シード獲得はもちろんのこと、1年時には箱根で3位、4年時には全日本で2位に入り、いずれも明治が3大駅伝に返り咲いてから最高順位をマークしています。全日本では3年時に3位、箱根では4年時に4位に入っており、こちらも2番目に良い順位となっています。


3大駅伝優勝に届かなかったのは残念ですが…箱根は東洋時代から青学時代へと移り変わる中で割って入ったのは服部、本田、矢野らを擁した日体大だけですし、全日本は黄金世代の4年間が駒澤の4連覇と完全に重なっており、駒澤の牙城を崩すことは出来ませんでした。スピードランナーを揃えていたことを考えると、出雲が最も優勝のチャンスがあったのかもしれませんが…明治は出雲を非常に苦手としていましたからね。4年時の台風で中止を除くと、7→11→7位と勝負出来ず…


それでも、この学年がいたことで全日本、箱根と安定して好成績を残せていたのは間違いないですし、最も明治が強かった4年間だったと言えるでしょう。今回紹介する東海に比べるとそこまでこの学年に依存はしていませんが…それでも2年時には出雲で6区間中5区間が黄金世代を占め、全日本では2~4年時と3年連続で8区間中5区間を占めました。

黄金世代の光(東海)

東海の黄金世代の光についてはさらに今更語るまでも無いかもしれませんが…關、羽生、鬼塚、館澤、阪口と都大路1区で1桁順位の選手がずらり、さらに西川、小松、郡司、松尾、中島らを擁したこの学年は少なくともこの20年で全大学、全新入生の中で最も有力選手が揃った学年だと思っています。


2年時に出雲で優勝、伊達、悠基を擁して3連覇を達成して以来10年ぶりでした。そして3年時には箱根で10区間中7区間を走って悲願の初優勝を果たしました。黄金世代が加入したことによる最も大きな偉業は、これまで一度も勝てていなかった箱根をついに制したということでしょう。箱根は青学が4連覇を達成しており、箱根5連覇&2度目の3冠が懸かっていましたが、その青学を止めたのがこの黄金世代率いる東海でした。


4年時には全日本でも16年ぶりの優勝を果たし、4年間で3大駅伝を1度ずつ優勝、出雲では3位が2度、全日本では2位が2度、箱根では2位が1度と3大駅伝12回中8回3位以内で走っており、黄金世代が東海の黄金時代を築きました。しかし、今回紹介する4大学の中で最もこの学年に依存することに。出雲は2,3年時に6区間中5区間、全日本は一度も6区間の出場は無しですが、箱根は3年時に10区間中7区間を黄金世代が占めました。他の3大駅伝でも黄金世代が半分以上を占めるのがほとんどでした。

黄金世代の影(明治)

1学年に有力選手がズラッと揃うことによる弊害も当然あります。明治と東海の共通点と一般的な観点から見ていきます。まずは黄金世代の翌年度、3年間黄金世代と過ごす学年は…二極化しているのかなと。明治は横手、木村、東海は名取、塩澤、西田と力がある選手が加入する一方で中間層がやや弱くなってしまう傾向があるのかなあと。


1年目から黄金世代に割って入るだけの自信がある選手は、黄金世代とともに3大駅伝上位や優勝が狙えるわけですから遠慮なく加入しますし、まだ力はそれほどなく上級生になってから3大駅伝に出場出来れば…と思う選手も1学年上の黄金世代をそこまで気にしないでしょう。逆に他の大学ならば下級生の時から3大駅伝に出場出来そうな選手は、やや敬遠してしまう可能性が…


実際に横手、木村は1年目から3大駅伝に出場していますし、3大駅伝の出場回数も多いです。一方で2人以外で3大駅伝に下級生の時に出場したのは2年の出雲で牟田が出場しただけです。


そして2学年下となると、スカウトで苦戦しているのは否めないかと。近藤、江頭賢らが持ちタイム上位、箱根に複数出場した吉田や薮下はいずれも高校ベストが14分30秒オーバーの選手、この学年は3大駅伝で上位で走ることよりも下位に沈んでしまうことの方が正直多かった…


下級生の時に3大駅伝に出場したのも、江頭賢が2年の箱根に10区で出場したのみです。黄金世代の2学年下となると黄金世代が上級生の時に下級生となり、下級生の時に3大駅伝の経験が減ってしまうため、上級生となっても苦戦することが多いのではないかと。


明治は黄金世代の3学年下もスカウトは苦しく…3大駅伝に出場したのは末次と磯口の2人のみ、黄金世代とは1年しか被っていませんが、この学年も苦労した学年でした。黄金世代卒業後の8年間を上図に載せていますが、シード獲得は1度のみ、3年後には予選落ちも経験しています。黄金世代卒業後は坂口世代→阿部・中島世代と続き、それ以降もスカウトで苦戦はしていないのですが、特に箱根では結果を残せない状況が続いています。

黄金世代の影(東海)

東海は黄金世代の翌年度、3年の都大路にトップ3を占める名取、塩澤、西田が加入と驚異的なスカウトを2年連続で続けました。3本柱は3,4年時には3人ともチームの中心選手として大活躍を見せることに。一方でこの3人以外で3大駅伝に出場する選手は、4年間で1人もいませんでした。1学年上にも同学年にも大学トップクラスが揃っていては、出番を得るのは非常に困難です。


東海も2学年下となると、スカウトで苦戦しているのは否めません。3大駅伝に出場したのが本間、市村、長田、吉冨と4人いますが、13分台の高校ベストを持つ本間はいるものの、市村が14分20秒台、長田、吉冨は14分30秒台と過去2年と比べてもタイムで大きく劣ることに。さらに下級生の時に3大駅伝に出場したのは2年の出雲、全日本に出場した市村だけです。傾向としては明治と同様…


3大駅伝で苦戦することもやはり多く、市村が区間5位以内で走ったのは2年の出雲と4年の箱根のみで区間二桁が3度ありますし、本間も区間5位以内は3年の全日本のみで4年時は3大駅伝フル出場ながら全て区間8位以下となっています。長田は3年の全日本で6区区間賞はびっくりの快走でしたが、4年時は3大駅伝に出場出来ず…


チームとして見てみると、名取、塩澤、西田の3本柱が強力だったこともあって、黄金世代卒業の翌年度も全日本では最後の最後まで優勝を争っての2位、箱根でも5位と一気に崩れることはありませんでした。


しかし、3本柱が卒業後は石原の故障、箱根でのアクシデントもあって全日本で12位、箱根で11位とともにシード落ち、そして今年度は主力を複数欠いた影響もあって全日本で10位、箱根では15位と2年連続でシード落ちに沈んでいます。東海も黄金世代卒業後は石原・喜早→越・梶谷とスカウトはそれ以降も悪くは無いのですが、3大駅伝で苦戦が続いています。

まとめ

明治と東海を見てみると、やはり黄金世代加入後の2,3年後はスカウトで苦戦する傾向があること、さらに駅伝経験を積みにくいということで、上級生になって出場しても3大駅伝で結果を残しにくくなってしまうのかなあ。その後、スカウトが良くなってからも3大駅伝で明治が苦戦気味なのは、黄金世代の影響とはまた別だと思いますが…


東海もここで踏みとどまらないと、一気に予選会常連になってしまう可能性も、今年度のように箱根予選で苦戦すれば、予選落ちする可能性だって現実的にありますからね。来年度はチームにとっても大きな正念場となります。


黄金世代は3大駅伝優勝を狙うのにこれ以上ない頼もしい存在ですが、黄金世代に頼りすぎてしまうことはその後のチームを弱体化させてしまう可能性があります。特に4年時に頼ることはリスクが大きい。これまで、箱根基準で考えると駒澤時代→東洋時代→青学時代と流れてきていると思いますが、この3校に共通しているのは、黄金時代が終わっても強豪であり続けていること(最近東洋が苦戦気味なのは心配ですが)そしてもう1つ共通点がありました。


それが依存の基準として挙げている同一学年で出雲に5人、全日本に6人、箱根に7人以上という起用を3大駅伝で初優勝してから1度もしてこなかったということ。「それはスカウトが良いから」という意見ももちろんあるでしょうが、結果として特定の学年に頼らないチームを築き続け、強くあり続けてきました。しかし、状況が変わってこの2年で2校も起用してくることに。それが次回紹介する青山学院の4年生、次々回に紹介する駒澤の3年生世代となります。

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