駒澤3冠への軌跡 その1 ~過去の3冠校~
2022年度は駒澤大学が3冠を達成しました。前年度までで全大学最多となる24度の3大駅伝優勝を誇り8度の2冠を達成している駒澤ですが、3冠だけにはあと一歩届かずに逃し続けてきましたから、達成したのは感無量でした。本日からは「駒澤3冠への軌跡」と題して何回かに分けて振り返っていきます。最初はこれまでに3冠を達成した4大学についての紹介です。
私もさすがにこの頃は詳しくないので簡単に…出雲が始まったのが1989年ですから、もうその翌年度にいきなり3冠を達成したのが大東文化大学、出雲・全日本を制すると、箱根2区にのちの五輪ランナーとなる実井、5区にのちに大東大の監督となる奈良らを擁して3冠を達成しました。大東大は1989年度の全日本、箱根も勝っていますので、3大駅伝では5連勝を飾っています。これは他の大学がどこも達成できていない偉業です。
箱根は2年連続で2区実井、5区奈良、6区島嵜という盤石の布陣、1990年の箱根は5、6区ともに区間賞、1991年の箱根は5,6区ともに区間2位と圧倒的な強さを誇り、山の大東と呼ばれる所以の1つですね。ただ3冠達成後、大東大は3大駅伝で1度も勝ててはいません。大学駅伝で強豪であり続けることの難しさも改めて感じます。
2校目の3冠は順天堂大学が2000年度に達成。1998年度~2001年度の4年間、3大駅伝は順大と駒澤が6度ずつ優勝を飾っており、紫紺対決と呼ばれています。そんな中、クインテット(岩水、入船、野口、坂井、奥田)が3年時、1学年上に高橋謙介、宮井、宮崎と強力な布陣を擁した2000年度、出雲は奥田を除くクインテット4人+宮井、謙介、全日本はクインテット5人+謙介、宮井、宮崎と8本柱とも呼ばれた8人をそのまま起用して優勝を果たしました。
そして迎えた箱根では6区で先頭に立ったものの、8区で大きく差を詰められ、9区で高橋対決と呼ばれる駒澤との激しい争いで9区終了時には2位に後退することに。しかし、10区に宮崎を残していた順大が再逆転して見事に3冠を達成しました。2年生以下が出場したのは箱根で3区6位だった2年の中川のみ、強力な上級生がチームを3冠に導きました。順大は2001年の出雲もクインテットが全員出場して優勝、3大駅伝で4連勝を達成しました。
順大が全日本で優勝したのは過去に1回だけしかないんですよね。もちろん2000年に達成したもので、出雲の大東大と同様にたった1度の優勝を3冠に繋げました。その後は、今井、長門らが4年時の2007年に箱根を制覇し、以後は3大駅伝優勝は果たせていないという状況です。
3校目の3冠は2010年度に早稲田が達成、10年周期での達成というのも話題となりました。3大駅伝になかなか勝てずにいた早稲田ですが、3年に八木、矢澤、三田、2年に平賀、佐々木、前田、1年に大迫、志方と1~3年に強大な戦力を有し、出雲は区間賞4つで2位に1分以上の差をつける圧勝、全日本は8区間中1区を除く7区間で区間3位以内の走りで2位に2分以上の差をつけてこれまた圧勝で2冠を達成しました。
しかし、3冠を狙う際に立ちはだかったのが柏原を擁する東洋大学、箱根は東洋が連覇中で2校の激しい争いとなりました。さらに早稲田は主力の佐々木、志方を故障で欠いて箱根は厳しいかと思われましたが…ここで奮起したのが4年生、5区の猪俣が逆転されるも東洋との差を27秒で留めると、6区高野が最初で最後の箱根で快走して逆転、その後は東洋が8~10区の3連続区間賞で追い詰めますが、早稲田も復路は全て区間2~3位でまとめ、21秒逃げ切っての3冠を達成しました。この21秒差は今も続く1位と2位の最小タイム差です。
3冠前に早稲田が3大駅伝優勝を果たしたのは1996年の出雲まで遡り、3冠達成後は3大駅伝で優勝を果たせていません。チームとして見事に嚙み合った2010年度の1年で3つ全て勝ち切る強さを見せました。
4校目の3冠は青山学院大学が2016年度に達成、もうこの時期は青学一強でしたからね。駒澤、東洋はちょうど過渡期で戦力的に優勝を狙うのは厳しい状況、東海は黄金世代が1年時でまだ青学に勝負を挑めるような状況ではありませんでした。一方で青学は4年に一色、安藤、3年に田村和、下田、2年に小野田、森田らを擁する盤石の布陣でした。
出雲は1~3区に鬼塚、館澤、關とルーキートリオを並べた東海が前半食い下がり、後半はアンカーにニャイロを擁した山梨学院が迫りましたが、6区一色が逃げ切って優勝を果たしました。全日本で青学に迫ったのは早稲田でした。1~7区まで全て区間3位以内の走り、1区武田、2区平、3区鈴木と4年生トリオを並べてトップに浮上、4区永山の区間賞の走りもあって7区終了時に青学と49秒差を広げましたが…再び立ちはだかったのが8区の一色、ここで逆転して全日本初優勝、3冠に王手をかけました。
箱根は3区秋山で先頭に立つと、そのまま最後までトップを譲ることのない盤石な走りで3冠&3連覇を達成しました。田村和が7区でアクシデントがあって区間11位、ここで早稲田が1分20秒差の2位まで迫りましたが…8区下田が1区間で4分以上引き離して勝負あり。まさに青学時代を象徴する3冠となりました。3大駅伝では前年度の箱根も含めて4連勝を達成、その後も出雲、全日本で各1回、箱根は3回優勝を果たしており、3冠達成後も強さを維持して今日に至ります。